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アンサンブル平均
物理量の期待値
物理量の期待値は
⟨A⟩=M−1∑j=0ujAj
で与えられる。
ただし、
M は系の状態の数、
uj は状態jの実現する確率、
Aj は状態jが実現しているときの物理量Aの値、
である。
状態の実現する確率
粒子数が変化しない場合(Canonical Ensemble)
統計力学の帰結から、状態J が実現する確率uJ は、その状態のエネルギーEJ と温度T をもちいて
uJ∝exp(−EJkBT)
のように書ける。ただし、kBはボルツマン定数である。
分配関数 Zを
Z=∑JuJ=∑Jexp(−EJkBT)
と定義すると、期待値⟨A⟩は
⟨A⟩=∑JAJexp(−EJkBT)
で与えられる。
例
粒子の吸着しうる「席」がM 個並んでおり、その上にN 個の粒子が吸着しているとする。1個吸着したときの吸着のエネルギーをe とする。
吸着している「席」を1で、吸着していない「席」を0で表わす。0と1の分布を一つ決めると、状態が一つ決まる
M =4 N =1 J=0 1000 J=1 0100 J=2 0010 J=3 0001
状態 J の全系のエネルギーは、
状態 J の生じる確率は、 ;
課題1: 上の例で、M =4 N =2 のとき、どのような状態があるか、すべて書く。また、それらの状態での全系のエネルギーとそれらの状態の生じる確率を求める。
粒子数が変化する場合(Grand Canonical Ensemble)
統計力学の帰結から、状態 J が実現する確率は、その状態のエネルギー EJ 、温度 T、粒子数 N 、化学ポテンシャル m で以下のように書ける。
; はボルツマン定数 大分配関数 期待値 例:粒子の吸着しうる「席」がM 個並んでおり、粒子が吸着したり脱離したりしているとする。1個吸着したときの吸着のエネルギーをe とする。
吸着している「席」を1で、吸着していない「席」を0で表わす。0と1の分布を一つ決めると、状態が一つ決まる
M =3 J=0 000 J=1 100 J=2 010 J=3 001 J=4 110 J=5 101 J=6 011 J=7 111
状態 J の全系の粒子数は、 ; (はi番目の「席」に吸着していれば1、そうでなければ0) 状態 J の全系のエネルギーは、 状態 J の生じる確率は、 ; 課題2: 上の例で、M =4 のとき、どのような状態があるか、すべて書く。また、それらの状態での全系のエネルギーとそれらの状態の生じる確率を求める。
課題3: 上の例で、M = 100 のとき、状態の数はどれくらいか。また、現在最高のコンピュータは1秒間に約 109 回の演算ができると言われているが、M = 100 の系での平均値を計算するのに、このコンピュータで最低どれだけの時間がかかるか求める。
- 課題1
- Canonical Ensembleの例で、M=4, N=2のとき、どのような状態があるか、すべて書く。また、それらの状態での全系のエネルギーと状態の生じる確率を求める。
- 課題2
- Grand Canonical Ensembleの例で、M=4のとき、どのような状態があるか、すべて書く。また、それらの状態での全系のエネルギーと状態の生じる確率を求める。
- 課題3
- Grand Canonical Ensembleの例で、M = 100 のとき、状態の数はどれくらいか。また、1秒間に約 1012 回の演算ができるコンピュータを用いた場合、M = 100 の系での平均値を計算するのに、最低どれだけの時間がかかるか求める。