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misc:変数とポインタ

文書の過去の版を表示しています。


Use–mention distinction

記号自身に意味を持たせるのか記号の書き方に意味を持たせるのか

先はキャロルの原文を

'Or else it doesn't, you know. The name of the song is called “HADDOCKS' EYES.”' 'Oh, that's the name of the song, is it?' Alice said, trying to feel interested. 'No, you don't understand,' the Knight said, looking a little vexed. 'That's what the name is CALLED. The name really IS “THE AGED AGED MAN.”' 'Then I ought to have said “That's what the SONG is called”?' Alice corrected herself. 'No, you oughtn't: that's quite another thing! The SONG is called “WAYS AND MEANS”: but that's only what it's CALLED, you know!' 'Well, what IS the song, then?' said Alice, who was by this time completely bewildered. 'I was coming to that,' the Knight said. 'The song really IS “A-SITTING ON A GATE”: and the tune's my own invention.' (THROUGH THE LOOKING-GLASS By Lewis Carroll CHAPTER VIII. 'It's my own Invention')

このままでは議論をするにはそもそも英語が出来なくてはいけないので、日本語でしかも骨子だけを抜き出して議論しよう。その前にキャロルに敬意を表して全文の翻訳を

「歌の題名は『鱈の目』1)と呼ばれておる」 「まあ、それが歌の題名なのね」とアリスは興味があるふりをしようと一所懸命。 「いいや、わかっておらんな」 ナイトはちょっといらいらしているみたい。「そいつは題名がどう呼ばれておるかじゃ。本当のところ題名は『老いた老人』2)なのじゃ」 「じゃあ、『歌はそう呼ばれているのね』って言わなくっちゃいけなかったのね。」とアリスは言い直します。 「いや、いけなくない。そいつは全くもって違う話なんじゃ。歌は『手だてと手はず』3)と呼ばれとる、がそう呼ばれとるだけじゃ、よいかな」 「ええと、じゃあ一体全体その歌は何なの」とアリス。もう何が何だかわかりません。 「おお、それじゃて」 ナイトは応えます。「本当のところその詩は『柵に座って』4)なんじゃ。それでな、曲は儂が自分でこしらえた5)」 (ルイス・キャロル著 垣谷公徳訳 鏡の国のアリス 第八章「儂のこしらえた」)

私の拙い翻訳、まさにmy own inventionを載せるより山形浩生氏の訳文あたりを引用した方がいいんだろうけど、山形氏の「騎士」は私のよりずっと若いイメージで、ちょっと趣味ではない。確かにこの『騎士』たちは結構大人げないので若い感じでも面白いとは思うのだが、一般にこのホワイトナイトはキャロル自身と云われており何となくおじさんのイメージ。単に、私がテニエルのイラストのイメージに引摺られているだけかもしれないが。

で骨子を抜きだすと、

  • 「その歌の題名は『鱈の目』と呼ばれている
  • 「『鱈の目』がその歌の題名か」
  • 「ちがう。『鱈の目』はその歌の題名がどう呼ばれているかである。その歌の題名は『老いた老人』である
  • 「『その歌は『鱈の目』と呼ばれている』は正しいか」
  • 「正しくない。その歌は『手だてと手はず』と呼ばれている
  • 「その歌は何か」
  • 「その歌は『柵に座って』である

cエキスパートでは、歌、歌の題名、歌が何と呼ばれているか、歌の題名が何と呼ばれているかの間の関係を変数と変数の型、typedefで定義した型とその型のオブジェクトに対比させて議論しているが、このような議論はtypedefに限らずプログラム設計上頻繁に必要になる。プログラミングだけではなく、数学でも関数と関数の独立変数や微分や積分の表式を考える上では非常に重要である。物理に至ってはこれらを意図的に混同することによって変幻自在に理論を組み立てていくことすらある。

use–mention distinction

この手の議論をするためには、まずuse–mention distinctionってやつを知ってないと議論にならないんだけど Wikipediaによると

The use–mention distinction (sometimes referred to as the words-as-words distinction) is the distinction between using a word (or phrase) and mentioning it. It arises in the context of grammar and philosophy. The distinction between use and mention can be illustrated for the word cheese:

Cheese is derived from milk.

Cheese is derived from a word in Old English.

The first sentence is a statement about the substance called cheese; it uses the word “cheese” to refer to that substance. The second is a statement about the word cheese as a signifier; it mentions the word without using it to refer to anything other than itself.

ということ。この稿後日日本語で解説予定。「待て、そして希待せよ」

1)
「タラの目」というのは何なのかさっぱりわからない。後の詩の中で何かしら丸くて金色に光るものの隠喩だというのはわかるのだが。従って直訳。まんまである。
2)
Aged Aged Manと言うのは所謂「馬から落ちて落馬した」の類い『後期高齢者』とゆうのも考えたが、それじゃあこのドキュメントにギャグ註が必要になってしまう。あ、これってギャグ註?
3)
wayもmeanも手法とか方法とかいう意味があるので、こんな感じかな。結構良くできたと自分では思っている。まさにmy own invention.
4)
a-sitting on a gateというのももう一つわからない。下品な地口は思いつくが、キャロルにはちょっと似つかわしくない。これも詩の中では特に裏の意味があるようには見えない形で出てくるので、テニエルのイラストのような状況なのだと想像。
5)
my own inventionってのはこの章の題名でもあり、分析は一番易しいが、訳すのは一番難しい。辞書を引けば、inventionには発明・創作という意味と同時に捏造・でっちあげという意味があり、音楽用語としてもバッハの「インベンションとシンフォニア」で有名な二声の楽曲のことを指すことがわかる。で、どう日本語に訳すかというと、いやー翻訳って本当に難しい。
misc/変数とポインタ.1597797527.txt.gz · 最終更新: 2022/08/23 13:34 (外部編集)

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