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misc:シャドーイング

夜(2009/12/7)リトルチャロを見ていたらシャドウイングをやっていた。やっぱりこれって結構著名な勉強法なんだ。そこで昔書いていたものを掘り出してみた。

荒木氏の研究日誌(2005.5.15(日) )より,

ところでこのページにある「シャドウイング」というプロセスは実に興味深い。いわゆる「復唱」というものである。このような話はどこかのブログの語学関連の話題の中で読んだような記憶もある。これを数学のような理系科目の教育にも臨床的技法として応用出来ないだろうか。講義という受身の形態に嫌気がさしているのである。というのも、学生が劣化性の板書コピーマシンと化しているからである。

確かに興味深い記事であり,興味深い方法である.この方法に名前が付いているということを初めて知った.実際のところ,私の英語学習法であり,英文原稿の記憶法であり,かつての数学・物理・化学などの学習法でもあった.この方法は「ほとんど同時」というところが味噌であり,「復唱」とは異なる.

現在車のCDチェンジャーにはStephan Fry氏朗読のHarry Potter and Goblet of Fireが挿入されているが,朝夕の通勤時に気が向けばこの「シャドウイング」を行っている.おかげで私の英語の喋り表現は児童文学並に平易もしくは幼稚である.ちなみに書くときの表現は冗長且つ難解で共同執筆者を辟易させ,もしくは共同執筆者に窘められているが.

初めてこの方法を試したときは,「学習法」として 誰かに教示されたわけではなく,むしろ時間短縮のための苦肉の策であった.かつて某英会話学校に通っていたころのことだ.その英会話学校は長時間の予習を課すことで有名であった.何度も語学テープを聞き「復唱」することを要求されるのだが,時間の余裕がないために「復唱」ではなく例文と同時発声により時間をほぼ半分に短縮しようという姑息な手段に出た.ところがやってみるとこれが結構いける.コツとしては完璧を期さないことであろうか.今のところ英語の自習法としてこれ以上のものを見い出していない.

よく考えれば,大学の数学や物理,化学などの講義でも同様の事を実行していたことに気がつく.教員が黒板に何やら書いて,その板書をノートに書き取るというのは今も昔も変わらぬ講義の風景であるが,現在そういう形態で講義をしていると,学生から,板書が早すぎるとか板書をすぐに消すなという抗議が寄せられる.どうやら,板書を全て書き終えてから学生に写す時間を与え,板書をノートに書き写している間は説明をしてはならず,写し終えたのを確認してから板書の説明をしなければならないらしい.私が学生のころ,教員は書きながら喋り,喋りながら書き,場所が足らなくなれば,黒板の余白を求めて瞬間移動し,喋り終われば次の説明のために黒板のまさに適当なところを消し,また書き始める,という様な講義が一般的であったように思う.それに合わせてノート録りも板書とまさに同時進行であった.「この部分を部分積分すると」と言われれば板書で部分積分が行われるのと同時にノートでも部分積分を行い,「ハロゲンの個々の性質を纏めると」と言われれば板書されるよりも先に,F, Cl, Br, I, Atと縦に書いて待機し,「あら,Atは説明しないのね」と思ってもAtの欄をわざわざ消しゴムで消したりせずに放っておいたものだ.ある時(内輪の話:伝さんの統計力学)などは,黒板いっぱいの計算の後,教員が結果をみて「どこか間違った」といいながら間違い探しをするのを見ながら,休憩したりもした.当然自分のノートでは正しい結果になっており,どこで間違ったのかもわかっていた.我ながら嫌な学生であった.間違いがわかっていたら指摘しろよ.

英語の講演原稿を憶える際にもこの「シャドウイング」を利用している.母国語ならともかく,「1回の講演で少なくとも3回は冗句で受けねばならない」という変な使命感を持っている私は原稿無しに外国語での講演をこなす自信はない.そこで原稿を作るわけだが,ハンドアウトを読んで憶えるようなことはしない.まず,ハンドアウトを本番の調子で読んだものを録音し,後はそれを聞きながら「シャドウイング」を行う.これで時間も計れるし,慣れてくれば何処に冗句を入れて,そのつじつまを何処で早口にして合わせるか,というようなことも考えられる.

「シャドウイング」は確かに有効な学習法だと体験的に納得できるが,これを行うためには事前に基礎能力の訓練を充分に積んでいることが前提のように思われる.現状で学生たちにこれをやらせるとするならば,まず何から始めれば良いのか.残念なことに,今のところアイデアがない.

misc/シャドーイング.txt · 最終更新: 2022/08/23 13:34 by 127.0.0.1

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