こんな題目なんで数学の話だと思ったかい。ところがどっこい新シリーズ、おっさんの昔話「あのころ儂も若かった」第一段なのさ。
修士の一年のことだったと思う。私の修論・博論の中心的手法は高温展開・クラスター展開・摂動パラメータについての微積分方程式・温度グリーン関数・二時間グリーン関数+オリジナルのグラフ展開っていう、まさにこれぞ理論物理、頭ワリーは、頭イテーは、頭カテーは、怒濤の三連打音。これで理論屋はみんなの嫌われモンという手法を使っていた。それは二時間グリーン関数を使った計算を始めたころだった。二時間グリーン関数は学部の講義の範囲外だったので、計算に入る前に指導教官のY先生が我々の部屋のホワイトボードまで出向いて簡単に説明をして下さった。
説明も終盤にさしかかったころ
「・・・で、これはレシデューをとってくれば、勘定できて・・・」
むっ、レシデュー?, レ?シデュー?,レシ-デュ?なんじゃそれ?ここでちゃんと恥を忍んで質問できるところが、我ながら偉いところだ。(自慢してどうする)
「先生、レシデュって?」
『なんじゃこいつ。大学院生にもなってレシデューも知らんのか。』と思われただろうが、Y先生はそこで動揺されるようなお方ではない。何もなかったかのように、
「レシデューっていうのはね、・・」
と説明を始めようとされた。そこへ、最初から聞いていた同室のM先生(当時助手)が、
「カキタニ君、リュウスウだよ、リュウスウ」
「あっ、留数なら解ります。元へ戻って先へお願いします」
とまあ、そんなこんなで個人レクチャアも終わり、十何年も前に煙草をやめられた忙しいY先生は、M先生が主を勤めるゼミ生の中でヘビースモーカーばかりを集めた煙草部屋(助手部屋)を後にされた。
M先生:「垣谷君、留数のことを英語でresidueっていうの知らなかったの?」
垣谷:「ええ、恥ずかしながら。」
M先生:「でもさっき留数の記号に何使ってた?」
垣谷:「Rsって書いてましたけど・・・」
M先生:「じゃあ、それって何の略のつもりだったの?」
垣谷:「そりゃあ、もうRyu-u-Su-uの略かと・・・」
お後がよろしいようで。♪♪♪♪